2010年12月10日

11.27富野由悠季講演会「這い上がるために」

11月27日、NHK文化センター梅田教室で開かれた富野由悠季監督の講演会「這い上がるために」へ足を運んできました。この講演会の存在を知ったのは3ヶ月前。たまたま手にした新聞の折りこみチラシに目を通していて、富野さんの写真を発見したため。この偶然がなければ、講演会が開かれたことすら知らなかったかもしれません。まさにニュータイプの勘、いやイデの導きか?(笑) 出来る限り、富野さんの言葉で当日の雰囲気を伝えたいと思います。



NHK文化センターはいわゆるカルチャー教室。チラシに“それぞれの世代・立場で頑張っている皆さんへの応援メッセージです”という一文があったように、主催者も富野さんも話を聞きに来る人達を主婦が大半と想定していたようですが、客席は10代の頃に富野アニメの洗礼を受けた人ばかりでぎっしり…(僕もブログに書いたことで、観客動員に貢献したようです 笑)。会場に入るなり、ファンの顔ぶれを見て苦笑いを浮かべていた富野さん、「用意してきたレジュメが使えない(笑)。アニメの話をしてもいいんですか?」とスタッフに問い、「どうぞどうぞ」というお墨付きをいただくと、「くそ(笑)」といいつつも、富野さんは先日北京大学でおこなった講演のことから話を始めました。
「北京大学は中国の最高学府であり、4万人くらいの学生がいる。その中で、アニメ同好会には600名もの会員がいて、僕の作品は放送もされていないし、DVDも売られていないのに、みんな僕のことを知っていました。中国の言論統制というのは実はいい加減」と笑いながらも、富野さんは中国の若者達に日本にはない熱意とパワーを感じたといいます。「彼らはアニメから何をするかと考えている。最先端のエリートが現場に出てきた時、どういう結果をもたらすのか僕はなんとなくわかります。ところが日本のクリエイターは“あいつら馬鹿だからさ”としかいわない。日本はバブル以降、おめでたい国民になってしまった。その例が友愛友愛を繰り返した鳩山前首相。だから何年も前から言ってるように、アニメ好きにアニメをつくらせるな。アニメ以外のところから人材を持ってこなくちゃいけない。例えば自衛隊に4年ぐらいいた人とか…ゲイバーを経営していた人とか(笑)」。

「最近の女子もの(プリキュア?)は明らかに子供の理解力を越えていて、男のビジネスマンの目線が入っているけど、それでいいのかと思う。ある40代の有名な監督が『俺たちはサンプリング世代だから』と言ってるのを聞いて非常にショックでした。それはビジネス論として間違ってはいないが、日本中がそれをやっていていいのか。5のうち4はやっていても、1つぐらいはちがうこと(オリジナリティ)をやってほしい。アイデアや演出は“異種格闘技”でなければならないし、そのためにあらゆるジャンルから学習していくしかない。味付けはアニメだけ見ていても埒が上がらない。映画名作100選と呼ばれているものを見たり、文学全集を読め。『アバター』にだまされるな、『タイタニック』がそんなに名作か(笑)。僕は時間がないから読まないけど、諸君らはやらなくちゃならないんです」

ここで「やっとレジュメの話に入れる(笑)」と、富野さんがアニメ業界へ入った頃の話へ…。「僕は日大芸術学部を卒業しましたが、4回生の10月までほとんど就職活動をしていなかった。バイト先に潜り込めたらと思っていたけど『うち、日芸レベルじゃ受からないから』と言われてた。そんな時、母親が新聞でたまたま虫プロの三行広告(求人)を見つけ、大学で映画づくりのプロセスは知っていたので受けに行った。一回の面接だけだったので、受かることができたけど、虫プロに入ることができなければ、野垂れ死にしていたかもしれない。現場で怖かったのはセルに色を塗るお姉さんたち。『あんたの進行は気に入らないのよね』とか言われると、アニメは絶対完成しない(笑)。だからマンツーマンでお願いしないといけませんでした。20年前、番組用に『アトム』を見て、よくこれで放送していたなと思ったけど…。“テレビ漫画”という言葉には、動くという要素が入っていない! いま気がつきました!!(大笑)」

そして、富野さんはアニメ監督としての持論を展開していきます。「虫プロで仕事をするうちに、手塚信奉者が集まっているのは怪しいな、と思うようになった。漫画と違って、動く絵というのは鑑賞する時間を強要される。止まっていてもそれが消えるまでの時間がいる。これが漫画とアニメの大きな違い。アニメは映画の一ジャンルなんだ。演劇的要素もあって、流れる時間を飽きさせずに見せるには、物語を語らなければならない。語るものがなければ、演出はできない! 評論は所詮評論。モノをつくるのは極度に固有の才能であり、育てる方法はありません。“よくわからないけれど、もっとこうすればよくなるのに”という感覚。金銭感覚を持つ前だから、限界10歳の感覚が引き出せないといけない」。

このあたりから、講演会タイトルの「這い上がるために」につながる話へ入っていったように思います。「(三行広告のように)たまたま会った、時の運。それが運の変わり目というのはあるけれど、アニメのようなスタジオワークでは圧倒的な才能があってはいけない。集団作業のなかで、僕がたくさんのコンテをやらせてもらえたのは、スケジュールを絶対守ったから! 内容のことは言われたことがない(笑)。最低限のことを守っていたら、『お前はここにいていいよ』と、社会の一員として認めてもらえるルールがある。面接だってスペシャリスト(としての才能)よりも人柄を見る。社会のあるべき根本はそんなものです。中高生くらいの理解力が才能なんじゃないかな」。

「『海のトリトン』の監督をすることになって、児童文学を二三、拾い読みすると、そこには“子供は大人が言っている嘘を見抜く力がある”と書いてあった。これは全力でぶつかるしかない。引っ掛かったことがあれば、10年20年経っても思い出すはずと思った。ところが原作のストーリーはひどくて使えない。手塚先生に『いいよ』と言ってもらって、原作は無視して、なんとか日本の状況とシンクロさせる回路をつくって終わらせました。これはガンダムまでの精神構造と全く同じなんです」。

「ガンダムでは、SF映画が巨大ロボットものでできるかという実験をやらせてもらいました。僕は映画の視聴者層を年代で分けたくなかったんです。子供向けの映画は子供の頃嫌いでした。だってつまらないもん(笑)。大人向けでもいい映画は子供でもわかるでしょ。そのために(スポンサーの)クローバーさんに嘘をついてガンダムをつくったら、ひどい目にあった。クローバーさんはもっとひどい目にあったけど(苦笑)」

講演時間も残りわずかとなったところで、質問コーナー。パッと手をあげたのは、最前列でジオンマントを羽織っていた旭堂南半球さん。富野さんに指名された南半球さんが「この国はいろいろもたんところに来ていると思うのですが、第3次世界大戦の可能性も含めて今という時代をどうお考えですか」と、富野作品に出てきたフレーズを絡めながらシビアな質問をぶつけました。それに対して富野さんは…

「20世紀まで地球(の資源)は無限だと思っていたのに、21世紀になって有限だとわかった。この命題を意識した時に、我々は解答を持っていない。だいたい消費を拡大させておいて、なにがエコなの? パソコンのプリンターがだめになって問い合わせたら、部品がないから新製品を勧められた。たかが3、4年であんな精密なものを捨てさせるのよ。そうしないと経済が回らないなんて…。第3次大戦はありえません。それだけの消費力がいまの人類にはないからです。ここに来る前に調べてきたのですが、第2次大戦当時の石炭消費量に換算すると、2007年はその8倍になっている。この上で戦争のために消費する余力はないと思います。

友愛の人を首相に選んだ我々は馬鹿なんだと反省しないといけないが、ロジカルにいくと、答えは見つからない。“ジークジオン”でも間に合わない。この意味はわかりますよね? だから、日本が明治維新の頃の人口、7000万くらいになればいい。世界の人口で6、7億。それで18世紀ぐらいの歴史、文化を十分積み上げてこれたのだから。根本的なところ、神話の時代に戻らないといけない、そのためのエクササイズがアニメや漫画なんだ。

ネットの拡大で表現をばらまくことができる。なるべく早く有限の地球をうまく使うために、一度反吐を吐き出そうぜ。そのためのインテリジェンスを生み出す力をアニメや漫画が内包しているんじゃないか。だいたいこの国で生まれるアニメや漫画の数の多さが異常でしょ。みなさんから神話の核になる物語を生み出してほしい。それがガンダムでのニュータイプです(笑)」

まるで用意されていたような言葉で講演会は締めくくられ、会場には大きな拍手が起こりました。いや、ホント素晴らしいエンディングでした! こうしてまとめてみると、刺激の多い時間だったとあらためて実感…。富野さん、僕も這い上がります!!

夕方からは、富野さんの講演会にリンクする形でおこなわれた“岡田斗司夫のひとり夜話特別編「富野由悠季を語る」+大質問会”(会場は大阪駅前第2ビルのキャンパスポート大阪)に参加。前半は講演会に参加した岡田さんがその内容を語り、後半では客席からの質問を受けてのトークを展開。さまざまな質問が出て、このイベントも楽しかったです。岡田さんは講演会のあとの楽屋での会話も特別に披露。その内容は…オフレコなので、僕に会った時に聞いてください(笑)。

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Posted by せんちゃまん at 13:19│Comments(0)ガンダム
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